平均値より中央値が重要
住宅価格の高騰が話題になっています。
特に東京都心のマンションは中古ですら1億円の大台を突破しており、新築に至っては2億円に迫ろうという勢いです。
もはや一般庶民には手が届かないばかりか、従来,タワマンの主要な購入層だった、いわゆる共稼ぎのパワーカップルにとっても、相当にハードルが高くなってきました。
しかしここで一つ注意が必要な点があります。
それは、世間を賑わしているこの販売価格1億円超えですが、実はその数値は平均値に基づく数値だということです。
当たり前のことですが、1と100の平均値は50です。1と100だけなのにこれを平均値50として見てしまうと、実体から乖離してしまいます。つまり平均値というものは、往々にして、その実像を見えなくしてしまいがちだ、ということです。
ではより実像に近い数値は何でしょうか。全体として価格が高騰していることは間違いありませんが、ここはやはり平均値ではなく中央値を見る方が、より実像に近づけるのではないでしょうか。
そもそもここでの中央値の意味は、より多くのマンションが、平均値ではなく中央値に近い価格で取引されている、と云うことです。
では平均値1億円超えのマンション価格、これを中央値で見るとどうなるでしょう。
不動産経済研究所の資料によれば、都内23区の2024年上期の新築分譲マンション価格の平均値は11051万円、これに対して中央値が8980万円と、2000万円以上の開きがあります。ちなみに都心6区(千代田、中央、港、新宿,文京、渋谷)に限ってみても、平均値が17830万円、中央値が15775万円と、その差はやはり同じく2000万円以上の開きとなっています。
また、東京カンテイの資料によれば、都内23区の2024年10月の中古マンション価格の平均値は8309万円、特に都心6区の平均値は中古マンションでも1億円超えで13800万円となっており、特に千代田区は2億円に迫る勢いです。
中古マンションに関しては、残念ながら、手元に中央値のデータがないため、正確な比較はできませんが、とは言え新築マンション価格と同様に、平均値と中央値にはやはり2000万円前後の開きがあるようです。
更には今回は詳細を省きますが、東京都のマンション価格といった場合、そこで示される平均値や中央値は、都心6区とその他の区、23区以外のエリア、という実情の異なる3つのエリアをひとまとめにした平均値や中央値ですので、より正確な全体像を把握するためには、また別の基準に基づくデータの検証が必要となります。
要は、平均値をもとに物事を判断する場合は、他の数値も並行して確認すべきである、ということです。
近年は特に、都心部の超高額物件が全体の数値を必要以上に押し上げる要素になっていることにも注意が必要でしょう。