先日、東京都調布市主催の「空き家活かし方会議」と称するユニークなイベントに参加してきました。
調布市内にある有名な「深大寺」の周辺に存在する「空き家」を見学し、そこから自由に発想を巡らせて、
「空き家」の活かし方・利活用の方法をみんなで考える、という試みでした。
調布市民だけでなく、50名以上の様々な立場の方々が参加され、見学が終わったあと、グループに分かれてディスカッション形式で、
各自の考えるアイデアを発表し合いましたが、すぐにでも実現できそうなアイデアから、ちょっと奇想天外気味なアイデアまで、
多彩な考えが発表されて、内容の濃い有意義なイベントとなりました。
そしてなによりも、自分達が「空き家」の持ち主になったつもりでその活用を考えたところに、
今回のイベントのポイントが有ったように思いました。
さて、この「空き家」の問題ですが、平成25年(2013年)の総務庁住宅土地統計調査によれば、全国の空き家数は820万戸、全住宅戸数6063万戸の13.5%に達しています。この820万戸には未入居の賃貸住戸や別荘等が含まれるため、実際の戸建ての空き家は318万戸です。これは全住宅戸数の5%にあたる数となります。また東京都の調査によれば同じ平成25年(2013年)における東京都の空き家総数は81.7万戸で、賃貸用などを除いた純然たる空き家は15.2万戸。東京都全住戸数725.9万戸の2%を占めるとのことです。
5年毎に集計されるこの統計の最新の集計が昨年実施され、その結果が発表される今年の動向が各方面から注目を集めています。
ところで、空き家の根本原因は、一口で云えば「住宅が余って来ているのに新築住宅の着工が止まらない」ということなのですが、
その原因を考えれば、まずは何よりも日本における「人口減と少子化・高齢化」、そして「国民の間の新築志向・持ち家志向の強さ」「中古住宅の評価システムや流通市場の未整備の問題」「介護や相続の問題」「国や行政の住宅政策や住宅供給サイドの問題」など、実に多方面に渡っています。
平成27年に「空き家」になってしまった住宅を円滑に処理するための「空き家対策特別処置法」が施行され、放置された空き家(特定空き家)への対応については行政のレベルでは一定の道筋がつきましたが、空き家予備軍としての中古住宅の活性化、等の国の対策もまだまだ端緒についたばかりです。
そしてこの空き家の問題を考えるときに最も重要なことは、「如何に空き家の発生を抑えるか」、すなわち「空き家にしない、させない」ということにつきます。その意味では、「空き家」の問題は他人事なのではなく、実は私達自身の問題なのだということなのです。実際住宅は、個人の所有資産のなかでも大きな部分を締めています。放置すれば当然にその価値も大きく損なわれてしまいます。それは国全体から見ても損失です。
私権の強い日本に置いては「自分の家なのだからどうするかは勝手」なのかも知れませんが、例えばドイツやフランスでは、国全体としての住宅資産の維持に腐心しており、管理不適切な住宅は職権で改修を命じられたり、没収されたりする法律も有るほどです。
さすがにそこまでいかなくても、まずは私達一人ひとりが、我が家を将来空き家にしないためにすべきことについて、真剣に考えてみることが必要なのだと思います。