注文住宅の施工においては、ハウスメーカーであっても、多くの場合、実際に家を建てるのは、下請けの工務店です。しかし、こと見積もりに関していえば、メーカーと工務店では、その内容は大きく異なります。

そしてその場合の違いとは、金額の水準もさることながら、より大きな相違は見積もりを作成(積算)する手順です。

工務店の場合、注文住宅では1軒1軒の規模や仕様がすべて異なるため、材料費も一つ一つを積み上げていき、合計費用を算出しますので、最後の合計がまさに見積り総費用となります。結果、最終的な見積もりは何十ページにもおよぶ分厚いものとなるため、施主がそれらすべてを読み込むにはかなりの知識と労力を要します。

これに比し、ハウスメーカーの場合は、設計の部署が抱える数多くの設計パターンから、土地の形状&面積、建物の形状&面積、施主の要望、等に最も合致したパターンを選んで可能な範囲で修正したものを基本プランとして施主に提示してきます。その意味では、ハウスメーカーの家づくりは正確な意味では注文住宅とは言えません。

そこでは、プランを構成する建築材料もあらかじめパターンごとに定められています。これがいわゆる標準仕様と呼ばれるものです。したがって、見積もりもパターンごと、標準仕様ごとに大枠が決まっていますので、提示される見積もりは大まかで1式いくら的な見積もり表示となります。

以上のように、ハウスメーカーと地場の工務店では、その見積もりの算出プロセスがことなるため、施主が両者の見積もりを比較する際には、以下のような点に注意が必要です。

<追加費用の発生>

・工務店の場合は総費用の見積もりが提示されてはじめて契約となりますので、請負契約締結後の追加費用の発生は比較的少ないと云えます。

・ハウスメーカーでは、標準仕様による見積もり提示の段階で契約締結を求められることが多く、請負契約締結後の仕様の細かい打ち合わせの段階で、施主が標準仕様と異なる仕様(オプション)を選ぶと、追加費用が発生することになります。結果ハウスメーカーでは契約締結後に建築費用がアップしてしまうことがよく起こります。

(このようなハウスメーカーのやり方には批判もあり、近年は是正の動きもありますが、まだまだ十分とは言えない状況です)

ハウスメーカーの場合は、契約締結前に標準仕様の中身をよく吟味し、それぞれの部材や設備が自分の希望するレベルの仕様なのかどうか、もっと上のグレードが希望なのか、或いはそこまでのグレードは必要としないのかをチェックして、自分が希望するグレードでの見積の合計額を本来は確認すべきです。

<値引き交渉>

・工務店の場合は、積み上げ形式の見積もりとなるため、基本的には大幅な値引きは難しくなります。大幅な値引きを提示された場合は、むしろ当初の見積もりの内容を疑うべきで、そのような工務店には筆者はマイナス評価をつけます。

・ハウスメーカーの場合は、営業施策上、値引きの枠は別途用意されていると考えるべきで、各社とも現場では100万円単位の値引きは珍しくありません。

・以上を踏まえたうえで、値引きの交渉では、やみくもにただ価格を下げさせるのではなく、各社が提示する部材・住設機器のグレードの調整によって価格を抑えることも検討すべきです。

見積もりの比較は、価格がどちらが高い安いだけで評価できるものではありません。高ければ高いだけの、安ければ安いだけの理由が本来はあるはずなのです。

建てる家の中身に即した妥当な価格であるかどうか、が大事なポイントですが、しかし正直、それを正確に判断することは一般の皆さんには難しいと思われます。

見積もり比較は決して簡単な作業ではないのです。

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