昨年来住宅業界では、所謂「ウッドショック」が市場をかく乱してきました。

コロナ禍による時ならぬ住宅ブームが、米国において住宅用資材の需給のひっ迫を引き起こし、そのあおりで、日本においても7割を輸入に頼る集成材などの建材価格が急騰し、連鎖的に日本産の柱や梁用の木材価格にまで値上がりが波及して現在に至っています。

住宅建築の現場では、資材価格の高騰に輪をかけ、トイレなどの住設機器がコロナの感染拡大による東南アジアの生産現場での生産停止や停滞により品不足となり、日本への供給が滞り、建物の完成引き渡しができない状況が未だに続いています。

さらに悩ましい事には、今回のロシアによるウクライナへの侵攻により、ロシアやウクライナ産の針葉樹を原料とする住宅建材の供給が止まる恐れが出てきており、日本における建材の供給不安と価格に上昇圧力がかかる懸念が生じていることです。ロシアやウクライナは住宅の構造材に使う針葉樹の産地であり、EUが輸入する針葉樹製材の70%以上をこれらの地域産が占めるとのこと。折角米国のウッドショックも沈静化しつつあったところへ、新たなウッドショックの発生で、玉突き的に日本の住宅業界にも資材不足と価格上昇のダブルパンチが襲っています。

ところで以上のような状況が、実際にマイホームを注文された、或いはこれからマイホームを計画されている皆さんに、どのような形で影響が及ぶのでしょうか。

1)既に契約済みで着工も進んでいる場合。

既に着工中の物件で、引き渡しが予定より遅れているケースは相当あるようですが、遅れそのものの問題以外に、税制優遇などを受けるための条件として一定の期日までに入居することが条件となっている場合があります。

たとえば「住宅取得資金贈与の特例」では、贈与を受けた年の翌年の3月15日までに居住の用に供すること(最低でも柱が立っていること)が条件となっています。

また2022年度に改定予定の住宅ローン減税ですが、改定後は控除の上限が住宅の性能ごとに差がつき、しかも2024年になると各ランク共にその水準が下がります。この場合の基準は入居年ですので、今年は影響ないものの、2023年の後半には、入居が年をまたぐかどうかで適用される控除限度額に差が出てしまいます。

2)契約は済んだが、まだ着工していない場合、

税制優遇や助成金などの支援を受けようとする場合、指定期日までの着工が条件となっている場合があります。例えばこの度新設された「こども未来住宅支援事業」では、2022年10月末日までの契約・着工が条件となっています。このような場合にも着工時期に注意が必要です。

もう一つ問題となるのは、請負金額が建材費などの急激な上昇の為、コストに見合わなくなり、金額の変更を業者から要請される可能性です。

請負契約の標準約款では、第15条(工事請負代金の変更)に 「次の各号にあたることにより工事請負代金が不適当となり、これを変更する必要があると認められるときは、甲乙協議して工事請負代金を変更するものとする」 とあり、その⑤ に「契約期間内に予期することのできない法令の制度、改廃、経済事情の激変 などによって工事請負代金が明らかに不適当であると認められるとき」とあって、今回はこの「経済事情の激変」に該当する可能性があり、特に相対的に資金繰りが厳しい中小のメーカーや工務店でそのリスクが顕在化してくるかもしれません。

3)マイホームの新築を計画中でこれから実行に移そうと考えている場合

特別に計画の実行を急ぐ必要性がないなら、市場が落ち着くまでしばらく様子を見る方がよいかもしれません。勿論様子を見たからと云って、価格が下がるとは限りません。

人手不足・仕様の平均的なレベルアップ・物流コストの上昇、など、長期的に見れば住宅価格上昇の要因は増えると思われます。

一方、業者としては年度末と云うこともあり、契約だけでも年度内に済ませたいという気持ちは強いはずです。値引きの提案や、早めの契約締結を誘うような甘言も囁かれる可能性がありますが、依頼主としては、資材価格上昇の影響や、工事の進捗見通しなど、担当者に納得ゆくまで確認し、想定外の事態が起こった場合の取り決めなど契約書の文面にも最善の注意を払う必要があります。

以上、住宅価格をはじめ、日本においても、物価高、インフレへの警戒が必要な経済環境となってきたようです。

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