家を新築するとき、更地になった土地の真ん中に、四方向に四角く青竹を建て、しめ縄を貼って簡易的な祭壇を拵え、神官がお祓いをしている現場をご覧になった方がいらっしゃると思います。これはいわゆる「地鎮祭」といって、新しく家を建てるときに執り行う儀式なのですが、決して高くはないものの費用もほどほどにかかることから、最近は特にハウスメーカーなどが新築を請け負うケースでは実施しないところも増えてきました。(但し、お施主には告げずに、独自に敷地の四隅に清めの酒や塩をまく程度のことはハウスメーカーでも行っているところは多いようです)。一方、伝統にこだわる地場の工務店などでは、いまだにこういった儀礼にこだわる業者も多くあります。

この地鎮祭ですが、元々は土地の守り神にその土地を使用する許しを請い、工事の安全を祈願する儀式として古くから住宅建築の現場で継承されてきたものですが、おそらくその原始的意味は、神が宿る土地を掘り起こすなどして人間が手を加えることに対する恐れや畏怖の念が原型になっているのではないかと思われます。

中世史家の網野善彦氏によれば、人間の力をはるかに超える力を持つ自然に人為的な変更を加えることは穢れることであり、その穢れを清めるために、嘗て日本人は、井戸を掘ったり大きな木や岩を動かすような際には必ず穢れを落とす儀礼をおこなっていたのだそうです。(網野善彦「日本の歴史を読みなおす」)。現代の「地鎮祭」においても、そのクライマックスが、施主が簡易的に盛った盛り土に鍬を入れる所作であることからも、元々の「地鎮祭」の宗教的な意味あいが想像できます。


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