新型コロナウイルス感染拡大の長期化により、テレワークへの移行も常態化してきたのでしょうか。ここにきて、テレワークを前提とした新しい働き方に適した職住接近の環境を求めて、山手線の外側に戸建ての建売住宅を求める動きが目立ってきています。確かにマンションに比べて間取りに余裕のある戸建て住宅は、テレワークによる仕事を前提とした住まいとしては狙いどころなのかもしれません。特に戸建ての建売住宅は、注文住宅と違って、土地を探し、更に建築業者を探す、といった面倒な作業や手間や時間がかからず、土地と建物がセットですぐに手に入る点で、しかもマイホームの完成した現物がこの目で確認できるという点で、住宅購入希望者にとっては、ある意味便利な買い物であると云えます。勿論マイホームの夢が手っ取り早く実現できるとは云っても、住宅は高額な買い物です。一般の消費者にとってはおそらく一生に1・2度の大きな買い物となるでしょう。しかも一旦購入してしまった後では、それが意に沿わないからといって、なにか欠陥が見つかったからといって、自家用車などのようには簡単に取り換えられるものではありません。また一緒に生活する他の家族(配偶者や子供)にとっての利便性(生活環境、教育環境、文化環境、その他)も十分考慮されていなければなりません。その意味でも購入にあたっては、一時の気分に流されることなく、慎重な準備と様々な角度からの検討が必要であることは云うまでもありません。
以上のような基本的な注意を喚起させていただいたうえで、今回は、戸建て建売住宅を選ぶにあたって注意すべき点について、その一端をお話しさせていただきます。
<東京西部に多い戸建て建売住宅の特徴>
戦後形成された郊外の住宅地で、50~70坪の比較的広い敷地を持つ住宅が、近年の相続などの増加により売りに出されるものの、個人が購入するには土地が広すぎて(値段が高すぎて)買えないため、建売業者が底値で買い取り、2つに区切って2棟の建売住宅として分譲するパターンが圧倒的に多い。
<建売住宅の基本的特徴>
・投資資金の早期回収が最優先される。先行投資により土地を購入して建物を建てているため、少しでも早い資金の回収が必要
⇒工期の最短化:職人の働く期間をできる限り短くする。(職人工賃の節約にもなる)
⇒販売期間の最短化:投資資金の金利負担をできる限り少なくする。
・コストの最小化を常に優先している。
特に大手の建売業者(パワービルダーと呼ばれる)になると、全国規模で数千棟~数万棟に及ぶ分譲住宅の供給を行っている ため、上記のようなコストカット要因に加え、建築資材の大量仕入れなどにより、建築コストはハウスメーカーや地場の工務 店の注文住宅に比べて圧倒的に割安。
<建売住宅のメリット&デメリット>
1.メリット
・土地と建物が一緒に購入できるので別々に探す面倒がない。
・建物が基本的に完成済なので今すぐにでも購入して住むことができる。
・購入物件をこの目で直接確認することができる。
・購入価格が割安。
2.デメリット
・建物が出来上がってしまっているので、建物の構造その他の中身の良し悪しが確認できない。
・もともと一区画だった敷地に複数棟が建っているので、多くの場合、隣棟同士の間隔が狭い。
・プライバシー、日当たり、北側斜線制限、等による制約、が多い。
・コスト優先の作りのため、外観・間取り・内装などがワンパターン。(選択肢が少ない)
<以上を踏まえた、建売住宅の選び方>
1.信用できる業者を選ぶ。(但し、大手だから安心と言う訳ではない。保証条件などをチェック)
2.できれば、完成する前に目星をつけて、建築中の現場をチェックする。
・基礎の養生の期間(コンクリ基礎を打ってから建物を建て始めるまでの期間)
・作業場の整理整頓、職人の働きぶり。
・降雨時の建築途中の現場の保全状態(雨晒しかどうか、ホロのかけ方、等)
・建築資材の材質、等級、状態、等(メモに控えて後でネットで調べる)
・外周防水シートの剥がれや張り漏れ箇所の有無(特に窓枠の周辺) など
3.現場周辺のハザードマップの確認。(地震・水害、等の災害の危険度チェック)
4.登記簿による過去と現在の所有権など、権利関係の確認(登記所で確認が可能です)
5.周辺住環境の確認(公園、学校、コンビニ、スーパー、お墓、高圧線、交通の便、等)
6.周辺住民とのトラブルの有無の確認。
7.南北に長い敷地はなるべく避ける。(家の奥まで光が入らず、家全体が暗くなる)
8.装飾過多で複雑な外観の物件は避ける。なるべくシンプルな外観の物件を選ぶ。
同じ価格帯であれば、外観がシンプルなものほど、建物の基本的な部分にお金をかけていると云える。逆に派手な外観のも のほど無駄なところにお金をかけていると云える。また、複雑な外観の作りほど施工不良も生じやすい。(中身でなく外観 の派手さで客の関心を引き付ける傾向に注意)
9.サービスでつく住設機器の豪華さに惑わされない。(大事なのは建物本体。また、それが割安であるとも言い切れない。)
※完成済の建売住宅、内緒で教える避けたほうが良い物件のチェックポイント
・建物の内部に駐車スペースを設けてある場合、外枠の柱や壁は基礎に正しく乗っていますか?ずれているのは、施工が甘く雑 な証拠です。
・基礎と外壁の境目にある「水切り金具」の裏側をスマホで写真に撮って、コンクリート基礎の表面に化粧のため塗るモルタル の塗り方をチェックしてみてください。見えないところまで丁寧に塗ってあるかどうかで、施工のレベルや丁寧さがわかりま す。
・但し、既に完成してしまった建売住宅の建物の中身の良し悪しをチェックすることは基本的には難しい、とお考え下さい。