『大和ハウス、戸建て住宅と集合住宅2千棟で建築基準満たさず』というニュースが飛び込んできました。ショッキングなニュースであり、該当時期に大和ハウスでマイホームを建てた方にとっては怒りの収めようのない事態だろうと推察します。しかし、今回のことは、実はある意味、起こるべくして起こった、ともいえるのです。つまりこの問題は決して大和ハウスだけの問題ではなく、ハウスメーカーすべてが共通に抱える問題であり、今後大和ハウスだけでなく、他のメーカーに飛び火する可能性も十分ありえるということなのです。一体それはどういうことなのでしょうか?それは一口で言えば、『形式適合認定』という仕組みが抱える構造的な問題に帰結します。
日本のハウスメーカーの発展の歴史は、住宅の商品化の進展の歴史でもありました。つまりは、もともと『住宅』は、地場の大工が一つ一つ手作業で作り上げるものでしたが、戦後の高度成長期を通じた旺盛な住宅需要に対応するためにはそれでは追いつかす、住宅を大量供給するためには『住宅』の商品化(すなわち工業化)が不可欠でした。言い換えれば、住宅の商品化を推し進めることが住宅の大量供給を可能にした、といえます。その意味では、この『住宅の商品化』の担い手としてのハウスメーカーという存在も、生まれるべくして生まれたものだったと言えるでしょう
しかし住宅の商品化を推し進めるためには、常に製造コストの削減を図っていかなければなりません。そのためには、規格化・工業化をとことん推し進める必要があります。そこで取り組んだのが、部材の一括仕入れによるコスト削減と、「形式適合認定」の取得です。「形式適合認定」とは、「建築基準法に基づいて国が認定した住宅の工法」のことですが、要は各メーカーごとに自分たちが作る住宅の工法の形式を決め、国の指定を受けた認定機関による一定の基準に沿った検査を受けて、基準法に準拠している旨の認定を得た上で、その形式に沿って住宅を量産し、生産の効率化を図ろうとするものです。そして一度この「形式適合認定」を受ければ、1棟1棟の建築確認や検査は簡略化されてしまうのです。注文住宅といっても、建物の工法や仕様は決められているので、すべてが顧客の希望通りにできるわけではありません。ハウスメーカーの住宅が正確には「注文住宅」ではなく「規格化住宅」だと言われるのはそのためです。そして問題はその先にあります。住宅1棟1棟の本当の意味の質を決めるのは施工の精度にあるのですが、一度「形式適合認定」を受けてしまうと、認定された手順に沿って施工も行われているはずだ、という前提に立って、本来は個々の住宅毎に個別に行われるべき施工のチェックが省略されてしまいます。その住宅が、認定された工法通りに施工されているかどうかは結局のところ誰にもわかりません。最終的にはそのメーカーを信じるしか無いのです。そして今回の大和ハウスの施工ミスはまさにそんな部分に生じたわけであり、そうである以上、これは大和ハウスだけの問題ではなく、おそらくこの『型式適合認定』を取得して仕事を進めているほとんどすべてのハウスメーカーに共通の問題であろうと思われます。更に付け加えれば、すでに触れたような『形式適合認定』の仕組みに内在する不備(つまりはチェックが甘くなること)は、業界では以前から指摘されていることであり、仕組みの不備を良いことに規定通りの施工を行わなかった業者の一義的責任は免れませんが、以前から指摘されているにもかかわらず、それを見過ごしてきた検査機関や行政の責任も問われるべきなのではないかと考えます。