日常生活では、私たちは良く「損得判断」で行動を決めることが多いです。
それも、かなり目先の小さな範囲でのソントクを気にしています。

何故かと言えば、誰でもがわかりやすい。比較できるから。
数字が入れば、なおさらです。

例えば、「今なら安い」、「今週中は○割引」、「キャンペーン期間は、ポイントが5倍」、「限定○台限り」とか。人の行動を変えるには、このような訴え方が決断を促すことがわかっているので、良く使われます。

もう1つの理由としては、消費者は専門家ではないので、モノの良し悪しや価値が簡単に見分けられないことが多いということもあります。
ですから、同じようなものに見えれば、とにかく安い方が良いということになりがちです。

ただ、注意しなければならないのは、「目先のトクは、買い手のトクではない」ことが多いということです。
むしろ「売手の事情、戦略で、そういう表現や価格にしている」ということが、極めて多いのです。

まあ、小さなもの、低額なものであれば、それも良いでしょう。
しかし、大きなもの、高額なものであれば、よほど良く考えてみる必要があります。

例えば、最近しばしばある相談では、「中古マンションの購入希望」の話がありますが、こんな例がありました。

物件そのものは決まっていないが、立地や価格から2000~3000万円の中古マンションを買って、室内のリノベーションを1000万円以下で考えるということで「資金的に購入はどうだろうか?」というプランの相談が来ました。

確かに返済額から見れば、夫婦合算で収入の20%以下の返済額。可能なレベルです。
子供さんが生まれたばかりでしたが、これなら将来やっていけそうな価格ではあります。
35年のローンです。

しかし、合せて物件が5~6つ提案されていましたが、建築後の年数を見ると、最近のものでも15年前、その他は、ほとんど築40~50年のマンションばかりでした。

一般に、マンションは、15年を経過すると、価格が大きく下がります、
そう言う意味では、このあたりの価格帯で、ソコソコ便利、住みよい地域となると、このような古い物件になるのでしょう。

私の意見としては、反対しました。
確かに、今すぐ、数年は良いでしょう。しかし、ここにあと何年住むのでしょうか?
35年ローンです。あるいは、途中で売れるのでしょうか?

もう、そろそろマンションの物件的には、限界時期になってきています。
表面的には良さそうでも、内部はコンクリート、鉄筋が劣化したり、設備的に一気に問題が出やすいでしょう。

また、今後空き家がドンドン出てくる中では、何年かしてくれば、買い手側の比較対象で売れないと考えられます。建て替えも無理。
また賃貸に出すと言っても、賃借人がいるのか?賃料は?

いろいろなデメリットが浮かんできます。
住人の年齢層が高いのでは?管理体制は?構造は?管理規約は?修繕積立金は?
管理集会は機能しているのか?など。
「マンションは、他の住人と運命共同体」、もう心配なことだらけです。

価格の安さ、返済だけで考えれば、十分購入可能でしょう。
しかし、将来ローン返済の35年を考えたら、良い決断なのでしょうか?

住宅購入というのは、すべてを長期間(人生後半?)固定(物件、ローン、環境、立地など)することでもあります。あらゆる状況変化に対する柔軟性が、あまりありません。

目先のソントクとか、価格の安さだけに目を奪われることなく、多角的、長期的な観点で考えないと後で後悔することになります。

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