前号の続きです。住宅価格が、コロナとウクライナにおける戦争の影響で大幅に上がっているとお伝えしました。今後、建物の固定資産税はどうなるのでしょうか。

まず、家屋の固定資産税額は以下の式で求めます。

家屋の固定資産税=家屋の評価額×税率1.4%

問題はこの「家屋の評価額」の算出方法です。算出式は以下の通りです。

家屋の評価額

=評点数【床面積×単位面積あたりの再建築費評点(1)× 経年減点補正率(2)】× 評点1点あたり価額(3)

何やら難しい計算式となってしまいましたが、

1)床面積×単位面積あたりの再建築費評点とは、
その時点で同じ内容の家を作り直したと想定した時にかかる費用(再建築価額)を意味します。国の定める「固定資産評価基準」を元に、屋根・外壁・基礎・天井・内壁・床・各種設備ごとに再建築価格を算定します。

2)経年減点補正率とは、
家屋の経年劣化によって生じる価値の減価を反映させるための補正率の事で、1年経過ごとに補正率は減少し、木造家屋の場合は25年後【東京都の場合は27年後】の補正率が0.2となるように定められ、以降は0.2より下がることはありません。

3)評点1点当たりの価額とは、
基本単位(1円)を地域や建物の構造の違いを加味した補正率で修正したもので、東京都の木造家屋の場合、修正後の単位価額は1.05円となります。
評点1点あたり価額=物価水準による補正率(東京都を1.0とする)×設計管理費等による補正率(木造家屋は1.05)×1円=1.05円

つまり「家屋の評価額」とは、「家屋調査」によって家屋の各部分ごとに再建築価格を算定し直し、これに経年劣化による補正率をかけて再評価した額、ということになります。

当然に、このような形で算出された家屋の評価額は、実際の建築に要した費用とは金額が異なります。

ここで一つ問題が残ります。コロナ禍中での所謂ウッドショックに追い打ちをかけるようなウクライナにおける戦争の影響をまともに受け、住宅価格が急騰しています。現状では資材価格だけでもコロナ感染拡大前比2割以上の上昇です。果たして今回のような住宅価格の相場変動は、家屋に対する固定資産税課税のベースとなる「家屋の評価額」算出に影響を与えないのでしょうか。

実は上記の(1)の「単位面積あたりの再建築費評点」の部分にも、新基準年度と前基準年度の間(3年間)における工事原価に相当する費用の物価変動の割合を基礎とした「再建築費評点補正率」を設けて、価格変動の直接的影響を緩和する対策が取られています。しかし建築費の上昇に伴いこの再建築費評点補正率も上昇した場合、家屋自体は経年劣化で古くなって価値が下がっても、評価額が上がってしまうこと(固定資産税額の上昇)は実際に有り得ます。そこで評価替えによって前年度の評価額を超える場合は、前号の土地の場合と同様、家屋についても税負担を考慮し前年度の評価額を据え置くことにしています(負担調整措置)。

それでもこのまま住宅価格の上昇が続けば、将来的には補正率自体も上昇し、結果として固定資産税が上がる可能性はあり得ると思われます。(ちなみに、2021年度評価基準による補正率は木造1.04、非木造1.07、2018年度補正率は木造1.05、非木造1.06、でした。)。

家屋の実際の資産価値は年を経るごとに下がるのに、固定資産税は一定水準以下には下がらない事、また家屋の実際の価値の下落にも関わらず、再建築価額算定の如何によっては固定資産税が上がる場合もあるという事には、なんとなく割り切れない気持ちが残ります。

勿論、家屋に固定資産税が課税されはするものの、家屋が存続していることによってその土地の固定資産税評価額は下がっている訳ですから(住宅用地に対する課税標準の特例措置)、このもやもやは差し引きゼロなのかもしれません。

*新築建物における固定資産税軽減期間が終わった後、本来の税額に戻るケースは値上げではありませんが、失念していることが多いので注意が必要です。

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