猛暑に豪雨に台風と、容赦のない今年の夏でしたが、北海道では早くも初雪とのこと、自然は御しがたいものだとつくづく思うこの頃ですが、住宅の業界に携わるものとしてこの夏、気になったことをお話ししましょう。
7月はじめ、広島県を始め西日本各地を過去に例を見ない大雨が襲い、多数の死者と家屋や生活インフラへ甚大な被害をもたらしました。2ヶ月近くたった今でも、未だに不自由な生活を余儀なくされている被災者の方々が大勢いらっしゃいます。さてその中にあって、豪雨発生以来、テレビなどで頻繁に現地の状況が映しだされ、その痛ましい映像は皆さんの眼にも焼き付いていることと思いますが、映像を見ていて特に気になったことは、大雨に押し流され土砂に押しつぶされた多くの家屋の中に、建てられてまだ日の浅い、目新しい住宅が目立ったことです。しかも無残な姿を晒した新しい家屋の多くが、テレビの映像から見た限りでは、いわゆる新興住宅地としてすぐ裏手に山や斜面が迫る場所に建っていました。また後日の報道で、今回多くの死者を出した広島県の某町の公園には、1907年7月に起きた土石流の被害を伝える石碑が建っていたことが伝えられています。驚かされるのは、この地域に限らず、土砂災害が予め充分想定される地域や洪水想定地域にも、新築家屋がなんら制限されることなく建てられているという事実です(現行では、土砂災害のリスクが高い地域として指定される『土砂災害危険箇所』。その中から特に危険な区域として都道府県が定める『土砂災害警戒区域』。その中で特に危険度の高い『土砂災害特別警戒区域』のうち、土砂災害防止法に基づき一定の土地開発が制限されるのは『土砂災害特別警戒区域』のみとなっています。しかも都市計画法や宅地造成等規制法に基づき県や市が開発許可を出した宅地が、一方で、土砂災害危険箇所や土砂災害警戒区域として指定される、という矛盾が起きています)。近年、住宅の耐震性や耐久性が重視され、地震に強い家にするための耐震等級の制定や、丈夫で長持ちする上質な住宅としての『長期優良住宅』認定制度など、国をあげてワンランク上の災害に強い住宅の普及に取り組んでいます。今回の被災地にあっても、おそらく被害にあった新しい住宅の中には『耐震等級3』の住宅や『長期優良住宅』に認定された住宅も含まれていたと思われます。しかしせっかくコストを掛けて『耐震等級3』や『長期優良住宅』等の認定を取っても、上記のような、もともと災害被害の想定される土地にそれを建ててしまっては、せっかくの認定住宅も元も子もありません。なるほど現実は、便利だから、土地が安いから、と言って立地の災害リスクを深く考えずに、或いはリスクの存在を知らずにそこに家を建てる人があり、買い手があるから業者も平気で潜在的に危険な場所にでも家を建ててしまう、ということなのでしょう。熊本地震に際しても、活断層の真上にあった家屋の多くが倒壊しましたが、それらの倒壊した家屋の中には新築間もない建物もあったと記憶しています。しかし今回の被災の事実からも分かる通り、建物が丈夫なだけでは、大事なマイホームは守れません。地盤や立地、周囲の環境を含めた総合的な災害に対する強さが求められます。勿論、全国いたるところに活断層のある日本において活断層の上には家を建ててはいけないといっても無理があるのも事実です。有名な『立川断層』ですら、昨今その存在の有無が議論されているくらいですから。しかし明らかに活断層とわかっている場所にわざわざ『耐震等級3』の家を建てて、その耐震性を試して見る必要も無いのではないでしょうか。結局のところ、需要と供給という市場経済の中でそのほぼ全てが決まってしまう日本の住宅の有り様が変わらず、リスクを取るか取らないかは最後は自己責任とされる、いう現状では、買い手としては、自己防衛の意味でも、せめてハザードマップの確認や行政の提供する災害リスク情報をチェックすることは絶対にかかせない、ということになります。
また少なくとも業者においては、買主・依頼主に対して立地のリスクに対する最低の注意は喚起すべきです。
それにしても、『長期優良住宅』や『耐震等級』認定の基準としてその立地が問われない、ということには、やはり大きな疑問が残ります。今のままでは、今後も日本のどこかの地域で、おそらくまた同じような被害が起きるのではないか、と云う思いが払拭できないのです。


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