住宅の間取りを考えるとき、近年の日本においては、2DKとか3LDKとかの略称がよく使われます。皆さんご存知のように、2DKは通常、DK(食事を作る台所と食事を食べる食堂の機能がひとつになった空間)+2部屋(居間と寝室)の合計3つの空間に仕切られた間取りを指します。同様に3LDKとは、LDK(台所と食堂と家族が寛ぐ場所としての居間の3つの機能が一つになった空間)+3部屋の合計4つの空間に仕切られた間取りを指します。3LDKでも、場合によっては台所の機能だけ独立して切り離された間取りもあり、その場合は「3LD・K」と表示されることもあります。

そもそも日本家屋における空間の構成を機能別に分けると伝統的に以下のような空間が存在していました。

玄関(エントランス・ホール)―家屋の入り口としての機能空間

便所(ラヴァトリー・レストルーム)

浴室(バスルーム)+脱衣場

食堂(ダイニングルーム)―食事をとる空間

≒居間(リビングルーム)―家族が団らんする空間

寝室(ベッドルーム)―睡眠をとる空間

応接室・客間(ゲストルーム)―接客のための空間

書斎(スタディ、ライブラリー)―読書室、勉強部屋、

押し入れ・納戸(クローゼット・ワードローブ)―収納の為の空間

台所・調理場(キッチン)―調理をする空間

≒土間(アースフロア)―調理場、或いは、家屋の外と内とをつなぐアプローチ空間

廊下(パセージ・コリドー)―部屋と部屋を繋ぐ機能空間

*但し、嘗て廊下とは主に「渡り廊下」の事であり、部屋と部屋とは襖で仕切られただけで繋がっていた。

戦前までの大家族主体の日本家屋においては、上記の機能別の空間がすべて備わった大空間が一つの家屋を構成していましたが、戦後においては、核家族化の進展に伴い、一般的な住宅家屋の空間も、そこに住まう家族の人数に合わせて縮小してきました。

具体的には、土間が無くなり応接室が無くなり、書斎が子供の勉強部屋に代わり、続いて台所と食堂の機能を一つにした空間(DK)が考え出されます。DK(ダイニングキッチン)という言葉は日本住宅公団による造語だそうですが、本来はダイニングキッチンを直訳すれば「食事する台所」となってしまうのですが、ここでは「調理場と食堂が一つになった空間」としての認識が定着します。これがLDKになると、ある意味旧来の日本的な習慣としての「居間で食事をとる」形態が復活してきますが、そこには、嘗て居間で食事を取ることを可能にしていた、折り畳み式テーブルとしての「ちゃぶ台」はもうありません。戦後の新しい「L&D」の空間は、一般的には食堂と居間は同一空間の中にありますが、スペースとしては区別されています。

また、畳と布団の生活であれば、居間は、日中は食事をしたり寛いだり、夜は寝室として機能することができましたが、現代のようにテーブルでの食事とベッドの寝室が主流となると、逆に居間と食堂と寝室は旧来の形のようには共用できなくなっています。

以上が、時代を経るに従っての機能から見た部屋空間の変遷ですが、実は以上の事を理解することが、これからの家の間取りを考えるにあたって、大いにヒントになるのではないかと思います。例えば最近、新しい間取りの例として、「土間」の機能を取り入れた間取りが見られます。玄関の内側に土間のスペースを広く取り、自転車を置いたり、遊び道具をしまったり、手洗い場を設けて外から帰ったらすぐに汚れを洗い落とせたりすることが可能です。手洗い場所が玄関を入ってすぐのところにあれば、コロナ禍にあっては大変重宝することでしょう。コロナ禍と云えば、キッチンの横や廊下のはずれにちょっとした書斎兼用スペースを設ける間取りも、コロナ禍を通じて増えています。また、ベランダの代わりに渡り廊下を復活させた例もあります。おそらく、これからの間取りのヒントは、限られたスペースの中で、生活に必要なそれぞれの機能を同一空間の中に実現させる、独創的な組み合わせを考えてみる、いうところにあるのではないかと思います。

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