前回ZEHとは何かについてご説明しましたが、
実際のところ、家を建てたいと思っているみなさんにとってZEH仕様の家を建てることにはどんなメリットがあるのでしょうか。
国がZEHを推進しようとしている目的はCO2の削減ですが、社会的使命はひとまず置くとして、ZEHが目指しているのは家庭で消費するエネルギーと家庭が創り出すエネルギーの差し引きをゼロにすることですから、当然に電気代やガス代はかからない、ということになります。これはZEHの最大のメリットですが、問題はそのためのコストです。
通常ZEH仕様にするためには
・熱交換換気システム
・ソーラーパネル
・高性能断熱材
・高効率給湯器(エコキュート、エネファーム、等)
・蓄電池
等の設備が新たに必要となりますが、家の大きさ等にもよりますがこれらの設備費用だけで600~750万円のコストアップ要因となります。
現実には住宅ローンを使って新築時の資金にする方が多いことを考えれば、仮にコストアップの700万円分を全期間固定金利のフラット35で借りるとして(金利1.4%想定)35年ローンで総返済額は886万円となります。
損得だけを考えればこの886万円を35年間で浮くエネルギー代で補えるか、ということになります。
一般家庭の年間光熱費の平均が27~28万円という数字を当てはめると、27万円×35年間=945万円となって、計算上は充分補える計算になりますが、上記の諸設備の耐用年数は現状では概ね10~15年といわれているので、設備の更新代や維持費を加味すれば、仮にZEH建築時の国や自治体の補助金分(150万円前後)を差し引いても、結局は割高な買い物になってしまいます。
ZEHのもう一つのメリットである高断熱性についても、昨今の一般仕様の戸建て住宅の断熱レベルの高さを考えれば、コストほどには断熱性能における実感的差はないと思われます。
誤解を恐れずに云えば、現時点では高いコストをかけてまでZEHにするメリットは無いのではないかというのが筆者の結論です。
実際、平成28年度におけるZEHの供給実績は全国でわずか2万5千戸(ZEH仕様に近いNearly ZEHを加えても3万5千戸)足らずです。国(経産省)は2020年までに新築戸建て住宅の半分をZEH仕様にする目標を掲げていますが、消費者の立場というものにも、もう少し配慮した施策であってほしいと思わずにいられません。
何年か前に喧伝された『スマートハウス』や『HEMS』はどうしたのでしょうか?
技術進歩はわかりますが、あたらしい言葉だけが消費者不在で勝手に一人歩きしているような気がしないでもないのです。


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