『自筆の遺言はダメ。公正証書にするだけでも不十分です』

遺言を書く人は、まだまだ少ないです。
では、「どんな遺言でも、書けば良いのか」というと、それは間違いです。

自筆遺言は、法律的には良いですが、「現実としてはやめるべき」でしょう。

以前、まだ若い人に、自分の遺言を想定で書いてもらったことがありますが、10人ほど書いてもらった中で、現実として使えるような遺言を書いた人は、誰もいません。

これが、高齢者であれば、まず良い遺言を書く人は、いないでしょう。
あるいは、「全財産を妻に・・」のような、シンプルな内容になりがちです。

先程の書いてもらった遺言を見ると、書くべきでないことを書いたり、逆に書くべきことを書き漏らしていたりも多いです。

また、読む人次第で、どうにでも解釈できる表現だったりなど、これではむしろ、「後でトラブルが起こるきっかけを増やしているのでは?」「これなら、遺言は、むしろない方が良い」とすら思えました。

自筆遺言では、多くはその時は1通しか書かないでしょうし、逆に複数書かれている場合もあります。

1通の場合、他の相続人に発見されて捨てられたり、逆に亡くなって、手続きが全部終わったあとに発見されたりすることもあります。

複数の場合は、前書いた遺言を忘れて、また書いたり、新たに書きなおしている場合もあります。出てきた遺言が、本物かどうかも証明できないこともあるでしょう。

また、相続人それぞれに別の遺言書を書いているという、「相続人へのお手紙」のようなものもありました。

とにかく、形として、いろいろなものが書かれる可能性があるし、内容が矛盾していたり、それぞれが「自筆遺言の条件」を満たしていないこともあります。

そして、遺言を書く人は、ほとんどが「遺留分の存在」を考えていないでしょう。
もし、遺留分を侵していれば、後日争いを起こす大きな原因になります。
(遺留分の争いは、良く起こる争いです)

さらに、自筆遺言の場合、相続発生後、「検認」という家庭裁判所の手続きが必要です。
これは、余計な手間と時間であり、自筆は書くのは簡単、安価ですが、逆に多くの「デメリットを持つ」ということを知らなければなりません。

これが、公正証書で遺言を作ることで、多くの「自筆遺言を欠点」を無くすことが出来ます。

文章が明確な内容になることで、争う余地が減り、本人確認もされており、同一内容で3通出来ることで捨てられる、変造などのリスクも防げます。
検認の手続きもする必要がありません。

公正証書は、作るのに費用と手間はかかりますが、それ以上に、相続発生後に大きな「メリット」があります。

しかし、公正証書なら100点か?と言えば、そうではありません。

文章は良くても、書いてある内容は、「本人の意向通り」書かれます。
本人は、自分の関心事を中心に書くので、「深く総合的」に考えた内容で書くわけではありません。後日問題が起こらないか?と言えば、「起こることがある」と思ってください。

例えば、遺留分の問題・・現実には遺留分を侵している公正証書遺言は、沢山あります。
不動産の問題・・簡単に複数の相続人で分ける内容であった場合、後で共有名義になり、争いのタネになることも、しばしばです。
相続税も、どうやって、納めるか?も考えるべきでしょう。

不動産、介護の世話も入ると、公平に分けることがむつかしいので、不公平な内容で書くことも多く、それが「争いのきっかけ」になります。
不公平になった場合には、きちんと遺言の趣旨や思いを説明する部分がないと、「不公平な配分」だけを書いたのでは、少なくなった人には納得されにくいでしょう。
不動産では、後日の「使い方」「処分」も、考えなければなりません。

つまり、「現実に使える遺言」を書くには、将来起こり得ること、人間関係、不動産、税金などを、かなり深く考えて想像して書く力、また、今後書き直しできる機会がなくても、これで、5年10年後も、ほぼ満足できるだろうと言うところまで想定して書く位の、かなりの予見力、文章力も必要です。

このようなことを、「遺言書を書く人」に求めても、もちろん無理です。

この部分は、法律、税金、不動産など、いろいろな分野の知識があり、さらには、人間関係を読み取れる「ヒアリング能力」のある専門家の力を借りないと無理でしょう。

よくありがちな「法律の専門家」だけでは、「現実に使える遺言」は、作れません。

つまり、形式上、公正証書にするだけでは十分ではなく、「書く内容」についても、いろいろな方面から総合的に検討できる専門家と一緒になって作って、初めて「現実に使える遺言」になります。


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