いま日本の住宅は、戦後70年間一貫して続いてきた流れが大きく変わる、時代の潮目に差しかかっています。では、戦後一貫して変わらずに続いてきた流れとは一体何なのでしょうか。

それは一言でいえば『住宅の新築偏重志向』であり、『持ち家志向』です。

住宅における日本の戦後は、人口の急増と都市への人口流入に伴う住宅難からスタートしました。戦後しばらく、国の住宅政策が、生活の基盤としての住宅を、何はともあれ広く国民に供給することに注力されたのは当然でした。

しかしその結果は、皮肉なことに、「スクラップ&ビルド」という、戦後の日本の住宅を特徴付ける、いわば資源の無駄遣いの流れを定着させることになります。

経年劣化の速いことが特徴の日本の木造住宅ですが、だからこそ古くなった家をいちいちリフォームするより、丸ごと立て替えてしまった方が、デザインや住み心地の面からみても手っ取り早く且つ合理的であり、そして何よりも戦後の高度成長が、国民の「スクラップ&ビルド」という形での「新築志向・持ち家志向」へのこだわりを経済面からも下支えしたといえます。

しかし、高度成長が峠を越えた後、この「スクラップ&ビルド」の流れは、国の場当たり的な景気対策にとって都合の良い仕組みへと変質していきます。

つまり景気が落ち込むたびに、国は住宅取得を奨励する様々な優遇政策を提示し、国民の「新築偏重志向・持ち家志向」を刺激し続けることによって、景気の浮揚を図るようになりました。

しかし、戦後長らく続いてきた日本の住宅を特徴づけるこの大きな流れをせき止めるような変化が、いま正に起きつつあります。その変化とは、以下のような変化です。
・人口減と高齢化
・空き家の増加
・人手不足と資材高騰による建築価格の高騰
・国民所得の低迷
・資源保護の世界的潮流

ところが国は、上のような変化がすでに顕在化しているにもかかわらず、相変わらず住宅政策=景気対策、というスタンスを基本的に変えていません。

国が近年提示する住宅分野の税制優遇政策は、相変わらず国民の新築偏重志向を前提とした新築奨励政策です。

最近は、これに自治体までが便乗しています。

家が余っているのに新しい家がどんどんできれば、家がますます余るのは子供にもわかる道理です。一方、最近の住宅価格の高騰は、所得の低迷と相まって、特に我が国の中間層の「新築・持ち家」の夢を打ち砕きつつあります。

日本の大手住宅メーカーの販売戦略も既にして販売個数は問題にせず、利幅の大きい裕福層向け高額物件に注力し、あとは海外で稼ぐ戦略となっています。この傾向は今後ますます強まると思われます。

だとすれば、国も国民も、そろそろ新築一辺倒の志向や政策を改めるタイミングにきているのではないでしょうか。

例えばアメリカでは流通している住宅の8割は既存住宅です。しかもアメリカでは、既存住宅は中古住宅とは呼ばず、『Existing House』と呼びます。まさに『現役で活躍している現在進行形の家』なのです。

国が既存住宅の流通システムの構築に本腰を入れ、私達国民も新築偏重へのこだわりを修正すれば、家余りも、住宅価格の高騰も一気に解決するはずです。

勿論そのよう動きの中では、外見の化粧だけの粗悪な物件の流通も起こると思われますが、しっかりと家屋診断(いわゆるインスペクション)を入れ、客観的な既存住宅の評価システムを確立すれば、国全体としての住宅資産の棄損も防ぐことができます。

若年世代の持ち家率が下がり、マイホームを持てる者と持たざる者との格差が広がりつつある今日こそ、発想を変え、ピンチをチャンスに変える絶好の好機と捉えるべきではないでしょうか。いまこそ、住宅はリフォームが標準、の世界を目指すべき時だと思います。


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