今年に入って、有名どころの大手の建売業者が、うわ物付きの所謂建売住宅ではなく、土地だけで販売している現場が見に付くようになってきました。

勿論、建売業者による土地のみの販売は、従来より恒常的に見受けられましたが、その場合必ずと言ってよいほど、「建築条件付き」が言葉通りの条件となっていました。

この「建築条件付き土地」が売りに出されるそもそもの理由はこうです。

建物を建てる際には、工事に着手する前に、行政に対して、建物の基本的仕様その他に関する詳細なデータを提出して承認許可を受ける、「確認申請」という手続きが必要であり、提出された「確認申請」が行政によって承認され、「確認済証」が発行された後でなければ、業者は建物の工事に着手してはならない、ということが法律で定められています。

そのため業者は、少しでも早くに物件の買い手を確保したい場合には、「確認済証」の発行受領を待たずに、物件の買い手に対して、土地を購入した場合はうわ物の建物の施工も指定した業者(実際にはほとんどが土地を販売した業者)に依頼しなければならない、という条件付きで、土地だけの販売を先行させる、という手段を取るのです。

これが従来から行われてきた所謂「建築条件付き土地」の販売形態です。

さて住宅業界では、コロナ禍の一時期、時ならぬリモートワークや在宅勤務の要請によって、特に郊外の新築一戸建てに特需が発生し、建売業者の多くが史上最高収益を計上しました。

しかし、その後は、新型コロナ流行の長期化や、ロシヤのウクライナへの侵攻などを契機とした、建築資材の品不足や物流の停滞などによる所謂ウッドショック等を経て、住宅価格が高騰し、物価高で実質所得も伸び悩むなかで、年明け以降、新築戸建て住宅の需要は急激に落ち込んでいます。

それにもかかわらず、人手不足などの要因が加わり、住宅価格は高止まりしており、当分下がる気配がありません。

個人的には筆者は、今後とも戸建て新築住宅の価格は下がらないとみています。

その理由は、慢性的な人手不足、熟練職人の減少、長期優良住宅・ZEH、等求められる住宅性能のハイレベル化や、太陽光発電設備の設置義務化等々に伴う建築コストの上昇は今後とも続く、と思われるからです。(実質的に延べ床面積を縮小して価格を据え置く、いわばステルス値上げ的な動きも、今後一層広がると思います)

建売業者にとって、土地の仕入れや建物の建築用に投下した資本は、少しでも早く回収したいのが本音です。

そこで、一刻も早くに買い手を確保したいという思惑と、建物への先行投資部分だけでも投資の期間を短縮したい思惑から、建売業者の土地先行販売が増加しているものと推測されます。

それでは、このような建売業者による土地先行販売に際して、購入希望者はどんな点に注意すべきでしょうか。

まずは、今まで述べてきたことからもお分かりいただけると思いますが、その土地が建築条件付き土地なのかどうかの確認です。

販売の現場を見るかぎり、特に昨今の建売業者の販売する土地に関しては、その土地が建築条件付き土地なのかどうか、現場の案内を見ただけでははっきりわからないケースが多いように筆者は感じています。(武蔵野エリアの現場に限る)。

建売業者にとっては、土地の販売だけでは商売になりません。うわ物が建ってなんぼの世界です。ということは、多くのケースにおいて、販売形態は「建築条件付き」となっているのが実際ではないかと思われます。

仮に契約上はそうなっていないとしても(建前上は、どの業者でも建てられることになっていても)営業レベルで、自社施工に持っていこうという様々な圧力がかかることは、充分想像できます。

その他にも、建築条件付き土地を購入の際にはいくつか注意すべき点があります。

ご参考に、そのいくつかを、列挙します。

1)すべての場合において、基本的に確認すべきこととして購入諸条件(建築条件付き土地かどうか、ローン条項付きかどうか、所有権等の権利関係、代金支払時期と支払総費用、など)を丁寧に確認すること。

2)特に建築条件付きの場合の提示された建築条件の詳細を確認すること。(ポイントは、購入契約の前に、必ず契約の結果建築される建物について、以下の内容を確認することです。)

・建物の完成引き渡しの時期

・建物の総価格(必要経費すべて込みの価格の確認)と代金支払時期

・建物の間取り、広さ、材質、住設機器などの具体的内容と選択の自由度(希望の間取りや設備機器が選択できると唄いながら、  実際は2者択一であったり、そのための打ち合わせ回数が2回とか3回に制限される、などというケースも実際にあるのです)

建売住宅のメリットは、購入後すぐに住めること、対象物件が既に完成していて、実物を自分の目で直接確認できること、等が上げられます。

デメリットは、建物が既に完成してしまっているため、その中身(使われている資材の材質や、施工の精度、など)を自分の目で確認することができないことです。

建築条件付き土地購入にあたっては、限られたメリットである、この目で建築中のマイホームの様子を確認することができるという利点を活かして、工事中はできる限り現場に足を運ぶことをお勧めします。素人であっても現場を自分の目で見ることは大事です。

いずれにせよ、契約してしまった後で、そんなはずではなかった、と後悔しないよう、まずは契約前にしっかりと諸条件を確認することが肝要です。